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名古屋高等裁判所 昭和55年(行コ)12号 判決 1982年4月28日

愛知県豊田市貝津町町屋一〇五番地

控訴人(一審原告)

成瀬保行

右訴訟代理人弁護士

伊藤典男

伊藤誠一

神田勝吾

愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地

被控訴人(一審被告)

岡崎税務署長 竹川実

右指定代理人

服部勝彦

横井芳夫

杉本昭一

苗代穣

五十嵐文夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し、控訴人の昭和四二年分所得税について昭和四五年七月九日付でなした更正処分のうち総所得金額一四五万三五〇五円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取消す。被控訴人に対し、控訴人の昭和四三年分所得税について昭和四五年一一月八月付でなした再再更正処分(但し、裁決により取消された部分を除く。)のうち総所得金額一六四万八四〇〇円を超える部分及び過小申告加算税賦課決定処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、控訴人において当審における控訴本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決二二丁表末行に「八五万円」とあるのを「八〇万円」と、同二三丁表の六行目に「岡本恭治」とあるのを「岡本泰治」と、同二七丁裏五行目に「木村宏一」とあるのを「木村完一」と、同三五丁裏二行目に「加藤義隆」とあるのを「加藤義輝」と、同所に「木村宏一」とあるのを「木村完一」と、それぞれ訂正し、同三一丁表末行に「(被告主張額)」とあるのを削除する。)。

理由

当裁判所も本訴請求を失当と判断する。その理由は次に記載するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決四六丁裏五行ないし六行目に「その余の裏金」とあるのを「「その余を裏金」と、同七五丁表八行目に「予約金」とあるのを「予納金」と、同八一丁表一〇行目及び同丁裏三行ないし四行目に「岡本恭治とあるのをいずれも「岡本泰治」と、それぞれ訂正する。)。

なお、当審における控訴本人尋問の結果も右認定を左右するに足りない。

一  控訴人の昭和四二年分総所得金額は、被控訴人主張の四七五万〇四四〇円と認めるものであつて、その理由は、左に記載するほか、原判決理由説示中右関係部分と同一である。

原判決四六丁表八行目「訴外大山孝春」以下同九行目までを、「訴外大山孝春に対し、畑八五坪外畦畔一〇坪とし、価額については畑部分八五坪部分のみに着眼し、これを坪当り六〇〇〇円の合計五一万円で売却したことが認められる。」と改める。

二  控訴人の昭和四三年分総所得金額は、八九五万九七一六円と認めるものであつて、その理由は、次に順次述べるとおりである。

1  同年分営業所得金額の基礎となる総収入(売上)のうち、不動産売買に関する収入金額は、被控訴人主張の二五二〇万四一〇〇円と認めるものであつて、その理由は、左に記載するほか、原判決理由説示中右関係部分と同一である。

(一)  原判決の説示のうち同年分番号9の物件に関する部分(同五〇丁裏七行目以下、五三丁表三行目まで)を全部次のように改める。即ち、

右番号9の物件の収入金額について考えるに、原判決援用の乙第一二一号証、第二二号証、第一二六号証によれば、控訴人は右9の物件を近藤三郎及び梅田某の仲介で昭和四三年七月頃村木次郎に対し、坪当り九万円(宅地二筆合計一七八・九八平方メートルを五四・三四坪とし、裏金坪当り六万円とし、裏金坪当り三万円とした。)、合計四八九万〇六〇〇円で売却した事実が認められる。

これに対し、控訴人は右売却による実質収入は三二六万〇六〇〇円である旨主張するので検討するに、原審証人内田連治の証言、原審及び当審における控訴本人の供述並びにこれらはより成立を認める甲第一五号証の一・三・四、第三〇号証中には、これに添い、「控訴人は自己が競落した右物件及び同年分番号10物件の土地合計約八〇坪を、本件売却に先立つ昭和四二年一一月一五日頃内田連治に代金四八〇万円、番号9土地上の家屋占拠者を立退かせて引渡すこと、もの約定期日までに引渡ができないときは手付金倍返しの約定で売買契約を締結し、その旨の不動産売買契約書(甲第三〇号証)を作成し、手付金六〇万円を受領したが、右約定の期日までに引渡ができなかつたので右手付金倍返しの義務を負つた。しかし両名交渉のうえ、昭和四三年三月一三日頃、控訴人が右手付金倍返しの義務をまぬかれる代りに、その後控訴人において右各物件を他に売却できたときは、その代金中坪当り六万円を超える部分を右内田に支払う旨を約し、その旨の誓約書(甲第一五号証の三)を作成した。そして控訴人が前記のように第号9の物件を村木に売却したので、右誓約書に基づき右代金中坪当り六万円を超える三万円を同売却土地約五四坪に乗じた一六二万円を内田に支払い、その旨の領収証(甲第一五号証の一)を受領した。なお、番号10物件については高木誠二に二三七万円(坪当り九万円余)で売却できたが、この分の右誓約書上の義務については控訴人が内田に二〇万円を支払うことで相済みとすることを約し同金額を支払い、その旨の領収証(甲第一五号証の四)を受領した。従つて、控訴人の番号9物件についての実質収入は三二六万余円である。」との部分がある。そして、右各供述は一見埋路整然とし右甲号各証の記載とも一致し措信すべきが如くである。

しかしながら、前記内田証言によれば、内田連治は控訴人と同様主として競落不動産の売買を業とし、且つ「不動産競売週報」を発行して同業者間に販売をしている者であるところ、前記誓約書を作成した頃番号9の物件を一般人に売却すれば少なくとも坪九万円で売れる状況であつたというのであるから、同業者である控訴人が、六〇万円の手付金倍返しの義務に代えて、一六二万円(誓約書どおりとすれば二四〇万円)もの支払を約したことは、均衡を失し、にわかに措信しがたいものがある。そもそも、控訴人は本件異議申立及び審査請求の各手続において右甲号各証を提出し、説明したような形跡が認められないのである。しかして、前掲乙第一二六号証によれば、控訴人は本訴提起後の昭和五〇年末頃前記仲介人近藤三郎に対し、「坪当り三万円の裏金取引が税務署にわかつてしまつたのは、近藤が紹介した買手が約束を破つたせいだから、その分の税金の責任をとつてくれ。」と申込んだ事実が認められ、右甲号証はこれと日時を接した原審第二〇回口頭弁論期日に提出された。こうして、原審第三三回口頭弁論期日(本訴提起後約五年半を経た昭和五三年六月五日)にいたり、控訴人は前段と同趣旨を供述するにいたり、同第三七回口頭弁論期日に甲第三〇号証を提出した。そして、前記内田証言はその後の第四〇回、第四二回口頭弁論期日においてなされるにいたつたものであり、しかも同証言には、甲第一五号証の四について、一度は本件番号9・10の物件と関係のない金員の領収証であると明確に証言するなと、矛盾する部分がある。

以上の点を総合すると、控訴人の主張に添う前記甲号各証及び証言、供述は措信し難いものであり、他にこれを認めるに足る証拠はないから、上記9の物件による収入金額は、被控訴人主張のとおり四八九万〇六〇〇円となる。

(二)  よつて、右認定額に、原判決判示の他物件による収入を加えると、同年度の不動産売却収入の総額は二五二〇万四一〇〇円となるものである(従つて、原判決五三丁表一〇行目に「昭和四三年分二三五八万四一〇〇円」とある部分を右のとおり改める。)。

2  同年分貸金利息等の収入金額に関する当裁判所の認定・判断は、原判決理由中同関係部分と同一である。

3  以上の結果、同年度分の営業総収入金額は、被控訴人主張の二六〇五万五五八〇円となる(従つて、原判決五三丁裏七行目に「昭和四三年分総収入金額は二四四三万五五八〇円」とある部分を右のとおり改める。)。

4  次に、以上の営業総収入の必要経費について検討すると、その総額は一七二四万四二六四円と認めるものであつて、その理由は、左に記載するほか、原判決理由説示中右関係部分と同一である。

(一)  原判決の説示のうち同年分番号1ないし6の物件に関する部分(同六九丁裏一〇行目以下、七一丁裏三行目まで)を全部次のように改める。即ち、

右物件に関し、その不動産取得税の合計額が一万二三四四円であることについては当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない乙第四六号証によれば、控訴人は競落により<1>の標記各物件(土地合計九一五・八七平方メートル)を含む二八三坪(一坪を三・三〇五六平方メートルで換算(以下同じ)して九三五・五〇平方メートル)を七一万五〇〇〇円で、<2>豊田市大字越戸字上井畑三-一 宅地三七坪(一二二・三一平方メートル)を一一万九〇〇〇円で、<1>の土地上に存する建物を七三万九〇〇〇円で、即ち以上の各物件を合計一八六万二〇〇〇円で取得したこと、右土地・建物の所有権移転登録税等(郵送料を含む。)は三万三四三〇円であつたことが認められる。

ところで、標記各物件(上記1ないし6の各土地)は右にみたように競落土地の一部であるから、その取得価格は按分計算により六九万九九九七円(<省略>)となる。そして、前掲乙第一七号証に弁論の全趣旨を加えれば、控訴人は前記<1>の土地上に存した建物を取壊し、その除去等による整地費用は七三万九〇〇〇円であるものと認められる。これに対し被控訴人は、控訴人は右取壊し建物の古材等を取得したから、同価額一〇万円を右費用から控除すべき旨主張するが、前掲証拠によれば右古材等は殆ど無価値なものと認められるから右価額を控除するのは相当でなく、結局標記各物件に関する右費用は按分算出すると七二万三四九三円(<省略>)となる。次に前記登録税等に基づき、標記物件に計上すべき登録税等を按分算出すると二万五八三五円(<省略>)となる。

控訴人は、以上と異り、標記各物件の取得価額として七一万五〇〇〇円、整地費用として七三万九〇〇〇円、登録税等として六万〇二五六円、測量費として三万円をそれぞれ出捐したと主張するが、右各事実を認めるに足る証拠はない。そうすると標記各物件の売上原価は一四六万一六六九円となる。

(二)  原判決七三丁裏七行目に「約二〇万円」、同一〇行目に「三〇万円」、七四丁目表二行目に「二〇万円」とあるのを、いずれも「二〇万円ないし三〇万円」と改める。

(三)  同七七丁裏九行目「さらに」から七八丁表一〇行目までを左のとおり改める。

控訴人は内田連治に対し、番号10の物件の明渡世話代として二〇万円を支払つた旨主張し、控訴人の原審及び当審供述の一部及び前掲甲第一五号証の四の記載は右主張に添うかの如きである。しかし、これを受領したとされる内田連治の原審証言では、同号証記載の二〇万円は、昭和四三年分番号15の物件の明渡世話代として受領したとか、後にこれをひるがえして、前記二の1の(一)で述べた控訴人と交した誓約書(甲第一五号証の三)に基づく同年分番号10の物件に関する約定金に関する和解金として受取つた(この点は措信できないこと前同所で述べたとおりである。)とかいうにすぎず、右主張に添うところがなく、控訴人の前記供述はたやすく措信できず、前記甲号証も右主張を認定する証拠ということはできない。

(四)  同八一丁裏七行目「証人大山義隆の証言」から同八二丁表初行までを、「前掲乙第七三号証及び控訴人の原審供述によれば、控訴人は番号15の物件に関し岡本泰治に対し五万円を支払つていることが認められ(右五万円は後記昭和四三年分販売手数料として計上。)、右に加え、更に岡本に対し金一〇万円を支払うべき事情が認められないこと。」と改める。

(五)  同八三丁裏二行目「一括して」より同丁末行「ものであること」までを、「一括して五〇万円(明確ではないが控訴人に最も有利と認めうる最大値として認定する。)で買受けたこと、標記物件(番号17の土地)以外の土地は田であるが、標記物件は傾斜地で右の田と比較してその価額を上まわらないこと、以上の事実が認められ、従つて標記物件の取得価額は、右買受価額を基礎として按分算出すると、一七万七九〇五円(<省略>)となる。控訴人は標記物件の取得価額は四六万円である旨主張し、甲第一八号証の三及び控訴人の原審供述中には右主張に添う部分があるが、右甲号証は原審第三二回口頭弁論期日にいたりようやく提出されたものであり、しかもその売買物件の記載の一部は控訴人が加算したものと認められ、且つ標記物件を含む五筆の物件は同一期日にいずれも近藤正夫より買受けているのに、標記物件のみの売買の外観を呈している等その記載内容に不審な点があること、」と改める。

(六)  昭和四三年分各物件の必要経費のうち、売上原価については、叙上(一)ないし(五)のほかは原判決の理由説示のとおりであるから、その合計額は、右(一)に認定した番号1ないし6の物件の額と、その余の物件についての原判決認定額との和である一五一五万七七八二円となる(従つて、原判決八五丁表六行ないし七行目に「昭和四三年分一五〇五万七八四五円」とあるのを右のように改める。)。

そして、右以外の租税公課外九項目の必要経費については原判決認定のとおりであるから、右売上原価にこれを加えると、必要経費の総額は一七二四万四二六四円となる(従つて、原判決九三丁裏七行ないし八行目に「昭和四三年分一七一四万四三二七円」とあるのを右のように改める。)。

5  そうすると、同年分の営業所得金額は八八一万一三一六円(上記3-4)となる(従つて、原判決九三丁裏末行から次行にかけて「昭和四三年分七二九万一二五三円」とあるのを右のとおり改める。)

6  同年分農業所得金額に関する当裁判所の認定判断は、原判決の理由中、同関係部分と同一である。

7  以上によると、本年分総所得金額は八九五万九七一六円(右5+6)となる(従つて、原判決九七丁表九行目から次行にかけて「昭和四三年分七四三万九六五三円」とあるのを右のとおり改める。)。

以上の次第であるから、被控訴人がなした本件各課税処分は、いずれも控訴人の上記各総所得金額の範囲内でなされた適法なものである。よつて、これが取消を求める本訴請求は失当として棄却せらるべく、これと同旨に出た原判決は相当で、本件控訴は理由がないから棄却することとし、行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷卓男 裁判官 浅野達男 裁判官 寺本栄一)

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